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『世田谷コーヒー宣言』 スペシャルティコーヒー専門店カフェテナンゴの公式ブログ

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2011年 02月 08日

エアロプレス

昨年末あたりから【エアロプレス】という言葉をよく聞くようになった。

文字だけみるとただの健康器具にしか思えない。

これが注射器のような形で、珈琲液に圧力をかけて抽出する新しいコーヒー
抽出器具だとは知っていたが、実物は見たことがなかった。


先日、お店に来たお客さんが器具を持ってきてくれたので、すぐに試してみた。

使い方を聞きながら何度か抽出してみると、これが楽しかった。

粉の挽き方、浸漬時間、撹拌するか/しないか、するなら何回撹拌するのかなど
手順を変えると、味も変わる。

圧力をかけるところはエスプレッソだが、ペーパーで濾すという部分は、ドリップだ。
コーヒー浸漬液を撹拌するところはサイフォンみたいだ。
そして、お湯を注いで、少し待って、押し下げて抽出という全体的な流れは、フレンチ
プレスとそっくり。

なんだかコーヒー抽出器具がすべて詰まったかのような、不思議な器具だ。
ハイブリッド抽出器具とでも呼びたくなる。

そして、エアロプレスで抽出した液体を味わったときの衝撃は、夜眠れなくなるくらい
強いものだった。

『ドリップコーヒーとエスプレッソの中間』とでも表現すればいいだろうか?

濃厚で滑らか、香りの要素ひとつひとつがあるべきところにきちんと収まって、整然と
そして一体となって鼻に抜けてくる。コーヒー豆の特徴もエスプレッソよりは、断然
表現しやすい。

これは、この器具でしか作れない味だ!

『素晴らしい』と思った。

後片付けは、簡単で楽ちん。手順、作法によって味の表現パターンは、無限大。そして、
誰でも安定して抽出ができるというのも器具としてとても良い。

しかし、褒めることばかりではない。

器具の形は、前述したとおりまるで【注射器】だ。コーヒーと手垢がしみこんだような趣
のある喫茶店のカウンターには絶対に似合わない器具である。

エアロプレスが似合う場所。それは、【理科室】。うん、違和感ない。【病院】これもOK。

とにかく、器具そのものが、【実験】を連想させる。そしてほぼすべてがプラスチックで
できている為、とてもチープな感じなのだ。

コーヒー専門店のカウンターに座ると、マスターがエアロプレスを目の前に置いて、プッシュ!

『サービスされてる感』はゼロ。そんなコーヒーに500円も600円も払いたくないと思う。

ネルやペーパーで時間をかけて淹れてくれれば、丁寧さも伝わるし、共有する抽出時間も豊かに
感じられるが、エアロプレスの抽出工程を見せられてはきっと興ざめだろう。

エアロプレスを見ることで、コーヒーは、抽出の作法、技術、時間もすべてひっくるめてサービ
スとして成り立っているのだということを再確認した。

『味がいいんだから、それでいいじゃないか』という意見もあろう。

しかし、スクリューキャップでも機能が果たせるのに、コルクを使う高級ワインと一緒で、
結果が良ければそれでいいという問題ではないのだ。感覚というのは嗜好品にとって命だ。

今後、エアロプレスでカフェをやるならば、コンセプトや内装を工夫して、エアロプレスが
似合う場所を作らなければならないだろう。

なんだか散らかった文章になってしまったが、まとめよう。

エアロプレスは、個人用にコーヒーを抽出するには、きわめて興味深く、魅力的な器具。
作られるコーヒー抽出液は、今までにはない【コーヒーの新しい味】を見せてくれる。

カフェテナンゴは、この楽しい器具を販売することに決めた。
使う人間がたくさんの工夫で、たくさんの味を押し出して、存分にコーヒーを味わってほしい
と思う。

カフェテナンゴが販売する『エアロプレス』はこちら

by cafetenango | 2011-02-08 05:33 | その他


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